配置転換のストレス

                                     経営者、管理職必見!!

春花の季節であるというのに、
眠れぬ夜を過ごしていませんか? 

春は配置転換の時期ですね。

昇進とは違って当たり前のように、
受けいれる方が多いのですが、
心はそうはいかないのです。
配置転換はとんでもない心への負担を引き起こします。

* 
「職場のメンタルヘルスがとことんわかる本」
97〜99ページ参照
今回はこれを読んでいる皆さんに、この部分を
サービスしちゃう!

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今は春、ここは岩手県 一関 厳美渓


1)悲劇的な事例

民間の流通業

とても多忙な部署で、うつ病を発症した41歳のAさんは5ヶ月程の療養の後、職場復帰のめどが立ちました。

人事部の方は、あんなに忙しい所へ復帰するよりは、
「もう少し楽な所で、8年前に彼が在籍し活躍した部署に移動した方がよいのでは」
との善意から1ヵ月後、移動と同時に職場復帰となりました。

その職場には顔見知りの後輩が何人か残っていて、
復帰直後のAさんには笑顔がみられたそうです。

皆はほっとして、そのうちAさんへの関心、気配りはいつの間にか減っていったのです。

けれど3週間も過ぎるうちに、彼の表情は憔悴していき、
復帰3ヶ月目には再度の休業となり、

その3週間後自ら命を絶たれたのです。



2)よくある事例

 公的病院

 医療改革があらゆる病院に及んでB病院では精神科病棟が縮小されました。

この職場のベテランナースCさん(47歳)は眼科外来へと配転されました。
そこの主任ナースはCさんより10歳も後輩でした。

同じナースとはいえ、心の専門と眼の専門では素人が考えても全然違うのです。
しかもここ数年、ナースのお仕事も専門化してきたのです。
テレビの連ドラなど見ればおわかりでしょう?

精神科病棟の、物知り辣腕ナースも、眼科外来では借りてきた猫のようでした。
見るもの聞くもの、ほとんどわからないのです。

その日彼女は蛍光眼底検査の介助につきました。
蛍光色素を注射するのですが、その薬物は腎臓に負担をかけるので、あらかじめ患者さまに
問診票を渡しておいて腎臓病があるかないかチェックするのです。

彼女はそういうことを教えてもらえなかったので、つい忙しさにかまけて問診票を
チェックすることを忘れてしまいました。

それがわかってしまい、後輩の主任ナースから、
「こんなことも知らないの!!!」「どこかで教わったはずでしょう!!」となじられ、

その晩から食欲がなくなり、夜も眠りが浅くなっていく日々が始まったのです。



3)民間企業経営のプロは驚いた!

公的病院の役員会で、ある経営者団体の顧問弁護士をなさっている方が、総婦長に

配置転換にともなう職場教育は十分なされているのか?(どうもそうではないので心配になって)」 と質問したら、

その病院の総婦長さんは
「ナースは何でもできるから大丈夫です。立って見ていれば仕事はじきに覚えられるから
大丈夫です。」とお答えになった。

管理人には、その弁護士の驚きあきれた顔がありありと目に浮かびます。
その総婦長は58歳で37年前に高等看護学校を卒業し、新人ナースとして配属されたのです。

医療現場に無関係の皆様にとってもご承知のように、40年近い昔の医療現場は
厳しいとは言っても、今ほど専門的ではなかったのです。

管理人はそのころ重い喘息で、長期間、県下一の大病院に入院していたけれど
とてもひどい時でも点滴は受けたことはなかったほどです。

点滴は、その頃手術直後の患者さんが受けていた高級な処置なのです。
今では下痢なんかでも簡単にしてくれるという37年前との格差!

その頃の日本の病院にはまた、呼吸器内科という科すらなく、
今ではどんな小さな内科病院にもある、ごく当たり前の人工呼吸器もなかった。
当時はナースが触ることもできない最新鋭の複雑な医療器械だったのです。

ところが今ではその器械を、1年目の新人ナースが操作しているのです。

医療がまだ牧歌的な時代に青春を過ごした、37年前の未熟ではあるけれど
美しく有能なナースが、今では総婦長にまで出世していた。

でも彼女の頭の中は、いまだに37年前に凍りついていて、
自分の経験からすぐ仕事を覚えられると思っているのです。

こういう
無邪気さと善意は理解できるのですが、
それが破局(悲劇の事例)へとつながっていく
のです。

配置転換されたナースがろくな教育も受けずに、後輩から罵倒され、
そのストレスでうつ病になって、退職を余儀なくされた。

これは安全配慮義務に反するわけです。そういうような病院の総婦長さんは、
損害賠償請求というトラブルに巻き込まれ、
彼女のメンタルヘルスまでも悪化するかもしれない。

彼女には古い職人気質の経験主義的な看護(=職場)教育の発想しかないので、
高度に専門化された職場では、ジョブローテーションに伴う正規のトレーニングが
不可欠だという、ごく当たり前の科学的な視点がなかったのです。



4)民間病院の雇われ経営者=管理人もアゼン!

 総婦長さんの立場も大変です。医療費がどんどん切り下げられている中で、
病院の経営を守らなければならない。
それは管理人も同じ立場です。

目の前から万札が人件費の世界へと消えていく。
うつ病になってベテランナースが定年を待たずに辞めたら、結果的に人件費率が抑えられる。
ついそう思ってしまう気持ちは、民間病院の経営に携わった管理人には全くわからないでもない。

しかし長年その病院の現場を支えてきた(建物を大きくし、病床を増やしてきたのです)
そのベテランナースの心と脳というカラダに間接的にせよ
ダメージを与えたことは紛れもない事実。

さらに医療というとてもクリティカルな対人サービス業で、下積みではあるけれど、
患者さまの不安や恐れを知り尽くしてケアすることが上手なナースが、いなくなってしまえば、
病院の売り上げは、あっという間にダウンする。

ナースという医療技術者のワーキングパワ−はジャストインタイムで供給はできないのです。
もしそれが可能なら、民間企業が大挙して病院経営に参入するでしょう。

そしてコムスンが介護事業の大きな部分から撤退したように、
とってもお洒落で保険のきかない病室を備えた病院でも、
投資を回収できないばかりか、訴訟を食らってしまう。

それはかつて見てきたし、皆さんも今見ている。


経営者、必見!!

ある大銀行の事例


 ATMのネットワーク共有のソフトという合併の分野でも、
序の口のところで「某大銀行」は極めて大きなミスをしてしまった! 

そのソフトを安上がりにするために、とっくの昔に、かつての自社ATMソフトを開発した
系列ソフト会社のプログラマーやSEたちをリストラ*してしまっていた! 

*以前の週間アスキーに、「5年後は医者と職安待っている」 という名もなきプログラマーが
激務の中で詠んだ句が記されていました。


だから有力ではあるけれど下請けのソフト会社に何気なく丸投げしてしまった! 
非正規雇用のエリートプログラマーが激務をこなしていく。

ネットワークの共有は意外にむずかしく(管理人はいまでもWINDOWS XPのでも悩む)、
各社のソフトを読んでもわからない。

だってそういうソフトは何万、何十万行のプログラムだから。
そういうプログラムを開発した偉大な大先輩たちはとっくの昔にリストラされ

後輩たちはもうわからなくなって、メンテナンスのソフトにすらバグを作ってしまう

という悪循環に陥ってしまったのです。



5)自治体にもそういう悪循環が

こういう職場教育に金を惜しみ、有能なベテランを平気でリストラするのは、
もちろん医療の現場だけではなく、ジョブローテーションが頻回な自治体にもあります。

水道局から福祉の現場にまわされたら、これって異職種配転で、

長時間勤務と東西を張りあうストレスの横綱なのです。



6)賢い経営者

 賢い経営者ならベテランの経験をマニュアル化し、トレーナーとして雇用を継続させて、
ジョブローテーションのための講師にします。

そういうまだるっこしいことがイヤなら、職場教育を専門の企業(たとえばウィルソン 
ラーニング ワールドワイド
 店頭公開企業)にアウトソーシングすれば、
職場のメンタルヘルスは向上するはずです。


教訓 この大競争時代、利益を出したいという善意の思いが、破滅への道になる場合もあるという西洋のことわざを、教訓とすべきです。


職場教育のない安易なジョブローテーションは、メンタルヘルスに毒!!

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