メンタルヘルスと労働組合


                                         
                                         2002年2月3日 更新


初心者のためのポイント
何よりも職場のメンタルヘルス対策を労組が取り組みましょう! 
ということがポイントです。
メンタルヘルスの問題はプライベートで微妙な問題ですが、同時に職場という組織の
問題でもあり個人では解決できないことのほうが多いのです。
だから労働組合が取り上げたほうがよいのです。



職場のメンタルヘルスを考えていく場合、対人関係はもとより職場にある仕事の課題や負担(人事労務管理、賃金制度などのストレス)が不快なストレス反応や心の不調をもたらします。

メンタルヘルス向上のために次の二つの見方が必要です。
  @ストレスの存在は仕方がないので、各個人が自分のストレス反応をどう克服するか?
  A組織的にストレッサーをどうコントロールしていくか?

 心の健康を守るためには、上のいずれも大事ですが、とりわけ労働運動には組織的にストレッサーをコントロールしていく社会的責任があるはず。
このページでは、職場のメンタルヘルスの現状を述べ、とりわけ成果主義の副作用について労働運動に役立つ目線で考えてみました。


目   次


(1)いきなりセルフチェック
(2)加速するメンタルヘルスの悪化
(3)心の病気になる理由
(4)成果主義とサービス残業
(5)コントロールすべき点
(6)対策
(7)労働運動におけるメンタルヘルス運動の意義





(1)いきなりセルフチェック

 YESと思った項目にはチェックを
□38度くらいの熱で仕事を休む事は、他人に迷惑をかけると思う
□手抜きは嫌い、几帳面でコツコツ仕事するタイプだ
□わりと気をつかい、宴会などでは場を盛上げる方だ
□根性はあるほうだと思う
□嫌なことでも断れないやさしさがある
□他人(上司、同僚、部下)の評価を気にするほうだ

3項目以上当てはまる方は、うつ病に注意を!


職場のメンタルヘルスであてはまることは?
□ うつ病などの心の病気は、精神が弱い人のなる病気である
□ 社会的に意義のある仕事、活動をしている人は心の病気にはまずならない
□ 職場における心の病気も早期発見、早期治療が大事
□ 大事だとは思うがメンタルヘルスは労働運動にとって副次的な課題だ

正解はすべて×
理解できない方は、拙著
「職場のメンタルヘルスがとことんわかる本」をお読みください

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(2)加速するメンタルヘルスの悪化

 業種、職種を問わずメンタルヘルスの悪化が進行しており、生産性本部メンタルヘルス研究所の推測によれば、いまやサラリーマンの10%がうつ病やパニック障害をはじめとした不安障害(神経症)で苦しんでいる。
 
 自殺者数は三年連続30000人を超え、しかも40〜50歳代のはたらき盛りの男性サラリーマンに多い。自治体でも在職死亡の1、2位は自殺が占めているところもある。うつ病はごくありふれた心の病で、女性の場合4人に1人が一生に一度はかかるほどだ。知らぬ間にかかって、自然に治る場合もある。いうなれば「心の風邪」なのだ。しかし風邪をこじらして肺炎になれば運悪く死ぬことがあるように、うつ病は死にたくなる病気のため、自殺の予防が大切となる。

 パニック障害というのは最近激増している病気で、内臓は悪くないのに、突然胸が苦しくなり死の危険を感じるほどの呼吸困難、動悸、手足のしびれ、冷や汗、めまいをきたし救急車で運ばれることが多い。

  精神の弱い人が心の病になる、というのは大きな誤解で、むしろ逆かもしれない。
 
すべてのカラダの病気と同様、誰しもがかかりうる病気なのだ。
 うつ病になりやすい性格傾向として、几帳面で仕事熱心、向上心に富む、正義感にあふれルールや約束に忠実で、周りへの気配りがあり飲み会などでは場を盛り上げる明るい性格、スポーツなどで鍛えられた根性の持ち主で辛くとも最後まで頑張る
、などの特徴(医学用語でメランコリー親和性という)がある。
 過労自殺の事例を見ると発病前はこういうケースがほとんどだ。こういう性格傾向の人こそ職場を支え、多くの人の信頼と好感をえているにもかかわらず。

 うつ病の場合、治るまでの時間が長く数ヶ月、1〜2年の休養が必要になる。どの職場でも長期休業者数の1,2位は心の病。うつ病やパニック障害は、きちんとした治療を受ければ必ず良くなる病気である。しかし職場や家族の理解がえられないために、多くの病人が適切な医療が受けられず苦しみ続け、時には死を選んでいる。サラリーマンにとってはメンタルヘルス対策は文字通り死活のテーマである。

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(3)心の病気になる理由

 仕事でおこる病気は、心や体を問わず長時間労働でおこる。ヒトが働く能力をワーキングパワーと名づけてみる。ワーキングパワー*を消費することによって仕事ができ、疲労が生まれる。

ワーキングパワーの消費 ⇒ 仕事 + 疲労

 そう考えてみると人間も、電気エネルギーを消費して作動する携帯電話やノートパソコンにたとえることができる。これらの装置も電力の消費で作動するが、疲労に相当するのが「熱」である。とりわけパソコンの脳そのものであるCPUは自ら発生する疲労ならぬ熱に弱く、暴走することもある。
 
  人間はこれらの装置以上に30年以上にわたって、今日も明日も明後日もという具合にワーキングパワーが維持(再生産)されなければならない。幸か不幸か人間の身体の仕組みは、使いながら充電ができるノートパソコンとは違って、通話中は充電できない携帯電話と同じだ。つまりワーキングパワーは家に帰って休養したり遊んだりすること、何より十分な睡眠を取ることにより疲労がとりのぞかれリフレッシュ(再生産)されるのだ。仕事の達成感や充実感は見かけは疲労を軽くするが、家庭での再生産なしにワーキングパワーは維持されない。

 *ワーキングパワーの再生産については
「職場のメンタルヘルスがとことんわかる本」第3章49ページからをご参照。  
 現代の労働時間は余りにも長く、NHKの調査によれば帰宅が午後10時以降のサラリーマンは、首都圏ではほぼ3人に1人の63%。午後8時前に帰れるのはわずか8%、あとの29%は午後10時以降という。

大事なことは長時間勤務そのものがうつ病をもたらすことだ! 
 
これは電通過労自殺裁判の最高裁判決でも述べられた国家的見解なのである。
過労自殺したあるエリート技術者の場合、IT産業で研究開発にたずさわっていたが、帰宅時間は午前2〜3時でシャワーを浴び着替えるだけの日々が続いていた。筆者を受診するサラリーマンで帰宅時間が「午前さま」という方はザラにいる。  長時間労働でワーキングパワーの再生産が不十分(充電不足)となり、そこに心の負担となるストレスが加わってメンタルヘルスが悪化するというのが筆者の見解である。

ワーキングパワーの充電不足 + ストレス ⇒ 心の不調、病気

職場のストレスを対人関係の葛藤と狭くとらえる人がいるが、これは大きな認識不足。

 職場のストレス(厳密にはストレッサー)には、リストラ、不安定雇用、出向・転籍、単身赴任、成果主義のような競争をあおりたてる賃金制度などがある。
 つまり政府や企業、自治体当局が「グローバル化への対応」や「改革」の際に好んで使う人事・雇用政策そのものが大きなストレスといえる。リストラそのものがサラリーマンにメンタルヘルスの悪化をもたらすのであり、メンタルヘルス研究所の有名なリポートの中に詳しく書かれている。 また労働が高密度化して質そのものが、ここ10年で大きく変化しており、大きなストレスとなっている。

これは世界的な傾向で、サラリーマンのメンタルヘルスの悪化は先進国で共通の現象ILO職場のメンタルヘルス(英文)(PDF)なのだ。経済のグローバル化が進む中で、情報技術革命の進歩とジャスト・イン・タイムによる生産性の著しい進歩がおこり、あらゆる業種で労働のあり方が変化した。新しいITやグローバル時代のストレス

 ジャスト・イン・タイムによって労働が高密度になり、モノやサービスを造りながら点検、監視、品質管理などの業務がなされるので、集中力や緊張感を長く持続することが必要になる。これらは激しい神経疲労をひきおこす。

 神経疲労が身体疲労と違うのは、ぐったりする不快なだるさで、休んでいれば回復するのではないこと。神経疲労の回復には積極的休養といって、スポーツや趣味でリフレッシュ(言葉をかえればワーキングパワーの再生産)することが必要になってくる。

 しかし、長時間労働のためリフレッシュの時間は著しく乏しくなっているのが現実だ。さらに経済のグローバル化は激しい競争を生み、単に商品が安いだけでは勝負にならず、より速い供給がポイントとなる。したがって開発期間が短縮され、時間に追われせかされるのである。IT化はサラリーマンが入手する情報の量を、すさまじいスピードで増やしつつある。人の結びつきが増えることは良いことではあるが、同時にアタマを悩ませる情報も増えるのである。
以上のように、労働のあり方が大きく変化し、
@異常な長時間労働がもたらされ 
A神経疲労を引き起こす業務が増え 
B時間のプレッシャーが増した。
これらはすべて身体よりも心に大きな負担を引き起こすのである。

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(4)経済的背景とりわけ成果主義とサービス残業

 @成果主義 ここ数年小さな政府を目指す傾向が強まって、民間企業はもとより自治体でも、大規模なリストラが進んでいる。
 できるサービスはすべて民営化、民間活力の利用にゆだねようというわけで、官は民の手法を競ってモノマネするという危険な事態が進んでいる。

 ここでは成果主義の弊害を考えてみよう。  

 成果主義の導入が何をもたらすのかといえば、サラリーマンの間での激しい競争で受験生のように一点で争うことになる。自分の殻に閉じこもり、同僚をみるのは自分との比較の時だけになり、サラリーマン集団を個に分解していく。アフターファイブの居酒屋での付き合いはいつしかなくなり、激しい競争の中で自分を強く見せるために愚痴をこぼしたり、泣き言をいってストレスを解消したり発散する場は消えた。今や居酒屋の代わりはカウンセリング・ルームで、仲間や理解ある上司の役割はカウンセラーが演じている。食事もバラバラに食べる(サラリーマンの孤食現象)。
 
そうなると、同僚のため息や弱音が耳に入らなくなり、食べっぷり*も見えず仲間の心の不調に気付きにくくなる。  
*食欲不振、だるさ、不眠はうつ病の三大身体症状

 競争が激しくなれば同僚という名のライバルを蹴落とそうとする。メンタルヘルス研究所の調査によれば、意外なことに人間関係の悪化は上司との間よりも同僚との間の方がより強いストレスになるそうだ。  

 出来高賃金、歩合制のように見える成果主義は、それらとは全く違う。

 成績表でいえば相対評価なのだ。凄まじい努力の結果90点をとっても、90点台の生徒が80%もいれば400人中100番にもなれない。逆に満点をとった人は、次にも満点を取らなければ勝てない。まして仕事は満点という枠にはまる世界ではないから、トップになった人は次の仕事ではさらに高い目標を申告しなければならない。いわば退職まで続く受験地獄。
 
 そもそも 仕事には数値化できない業務や作業がたくさんある。
高校受験にのぞむ中学生が受験に関係ない科目を勉強しなくなるように、成果主義ではサラリーマンは点数にならない仕事はしなくなり、こういう仕事の押し付け合いになる。仕事そのものの達成感が、点数=キャッシュとポストの獲得による快感に次第におきかわっていく。要領のよい者は巧みに立ち回り、点数のとれない同僚がバカに見え、優越感という一種の快感も加わる。

 けれど勝負というものはいつまでも勝ち続けられるものではないし敗北のショックは大きい。長い間レースの緊張を続けられるはずはない。で、結局はワーキングパワーの消耗が激しくなりメンタルヘルスの悪化で破綻する人が続出する。成果主義の結果、多かれ少なかれ職場のモラルが崩れ生産性は低下し、事故は増え、メンタルヘルスは悪化の一途をたどる。米国で行き過ぎた成果主義を実施している企業では、職員同士の殺人事件まで起こっているのだ。

Aサービス残業
  いうまでもなく違法であるが不払いの面だけでなく、労働安全衛生面から、心身に負担をひきおこし、ワーキングパワーの消耗をもたらす点で問題である。不払い面にのみ目を向けると、支払えば長時間残業でよいのか、ということにつながる。長時間労働(持ち帰り残業、フロッピー残業、メール残業もふくめ)それ自体が心身に打撃を与えることに注目しよう。
 残念な傾向;教師にみられる傾向として、「要員不足が現実だから、教師である自分が責任を持ってやらなければ職場に迷惑をかける、子どもや親の期待を裏切るため残業はしかたない」という善意ではあるが、自らを長時間過密労働においこむ傾向がある。教育、医療、福祉分野に多い「自己責任論」と「日本型集団主義」が職員の意識に浸透している現状を示している。

事例)
 教師の組合の方々とのある懇談会で、「『
1人の発病は職場の赤信号』だから、職場の労働安全衛生に組織的にとりくもう!」と筆者が述べると、そこの労組員は「精神の病気の方は、すぐに休んで自分らに負担がかかるので、正直いって迷惑だし、大事なこととはわかるけど、そこまでは考えられない」という質問(抗議?)があった。
 そういう教育職場では教職員が限界まで追い込まれており、気持ちとしては理解できるが実に情けない、連帯感に欠けた視点と思った。事実そのような、はたらく人々の連帯感が失われた職場で在職死亡や自殺が起こっているのである。

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(5)コントロールすべき点

何よりも時短がメンタルヘルスの向上をもたらす。
人権を無視したリストラ、転籍・出向・単身赴任はコントロールするのが理想だ。
成果主義が導入されてしまった職場では、どこが改革のポイントになるのか?

@裁量の度合いを増やし無理な目標を申告しない、させない 旧労働省の「ホワイトカラー職場におけるストレッサーコントロールの必要性について」を取りまとめた東大の山崎喜比古氏は次のような興味深い分析をしている(ここをクリック)。


成果主義のストレスは、目標の高さをD(Job Demand)、裁量の度合いをC(Job Control)とすればD/Cの比であらわされる。Dが高くCが少ないほどストレスが大きくなる。
 
成果主義の導入によって裁量の度合いが高まる傾向が多い。しかし高い目標に対する積極的な挑戦や過剰適応が生じる結果、追いつめられ、心身の追い込まれ、破綻が生じやすくなるそうだ

 いわば精神力が強い(?)と思われる、まじめで向上心の旺盛な人(前述したうつ病になりやすい性格の人)や上昇志向の人でメンタルヘルスの悪化がいっそう進むに違いない。したがって規制の要点は・・・
@適正な目標設定(要はストレッサーコントロール)と、
Aはたらき過ぎは心身の破綻を起こすという産業医学の知識の普及
B自己管理能力の養成

 また民間企業では、目標設定は密室で心理学的な手法を用いて誘導されるというのが現実である。あからさまにいえば「脅したりすかし(おだて)たり」である。欧米では目標設定に際して労働組合の参加がなされていることに注目しよう。欧州企業では工場ラインのスピードを速めるのにも労組の了解が必要なほどだ。

A考課にかんする情報を開示させる
 欧米企業では当然のようになされている。しかし日本では考課の基準、根拠はもとより、その結果も開示されないのがほとんどだ。これは職員の疑心暗鬼をまねき不安感が高まると同時に当局に対する信頼感をもなくすことにつながる。

Bプライドを傷つける報酬形式は避ける
 周知のように、なんと東京都では教員に成果主義を導入するという驚くべき事態となっている(平成11年12月「教育職員の人事考課制度について」教員等人事考課制度導入に関する検討委員会)。
現在では教頭、校長までの管理職どまりだが全教員に広がるのは時間の問題。

 管理職には勤勉手当が支給されているが、この原資から一律1%を差っ引いて上乗せ原資とし、まず競争にエントリーしてもらう。最終的に相対評価の5段階評価とし、1位には最高6%増、2位には最高2.5%の上乗せ支給する。3、4位は支給しない。つまり−1%そして最下位の5位からは罰としてさらに5%削るという−6%。 商品を製造販売する事業所の経営者が、成果主義を導入する動機はまだしも理解できる。

  ことの是非は、こう想像してみよう。公教育の比重が下がり、民営化あるいは独立行政法人化がすすんだ近未来に・・・
「本校では教育サービスのパフォーマンスと経営管理のコストを最適化するため、教員、教官の待遇は人事考課と成果主義によって5段階としております。父母の皆さまは担任、担当教官に関する業績評価と報酬を知りになりたいとお思いでしょうが、これは個人情報開示そのものですので残念ながら応じかねます。」皆さんは将来、こういう学校にお子さんを通わせたいだろうか? 
  民間企業のモノマネもここまでくると悲喜劇をもたらす。教師や公務員という職業人はプライドが高い。それがあるからこそ、良きにつけ悪しきにつけ職場の秩序とモラルが保たれていた。これを根底から傷つけることは実に愚かな人事労務策といわざるをえない。

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(6)対策として何が求められているか

メンタルヘルス対策とは病気の早期発見・早期治療ではない。
ストレスの濃度が高い職場ではリスクをかかえた職員を発見、救済することができたとしても、次から次へと発病者や自殺者が出るのだ。いわば
「1人の発病は職場の赤信号」なのであり、1人の発病は、その職場・組織が病気になっているということ示している。結論をいえば、メンタルヘルス対策は組織的なものであるべきで、予防的な対策を重視しなければならない。

@経営者や当局に対する啓蒙活動
 メンタルヘルスの悪化はサラリーマンの個人責任ではないことは、旧労働省の「事業場における労働者の心の健康づくりのための指針平成12年8月9日労働基準局発)(以下「指針」)に明らかにされている。職員個人にばかり責任を押し付ける当局・管理者には、まずこの国家標準である指針を啓蒙するべきである。職員や労働組合*は「指針」という国策にもとづいて(?)、当局・管理者に対しメンタルヘルスの組織的な対策を求める必要がある。 *労働組合に属していない、関心のない人々にはどのような方法があるかは、拙著に記されている。

A安全衛生委員会でのとりくみ
 安全衛生委員会をメンタルヘルス運動の場にしよう。ここでは労働安全衛生法にもとづいて職場のメンタルヘルスの実態調査、教育・啓蒙活動の企画・立案、カウンセラーや産業保健婦など専門家の採用などさまざまな取り組みを提言することができる。

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(7)労働運動におけるメンタルヘルス運動の意義

 官民を問わず、現在のような生産性の極限をめざす人事労務政策が続いていくと、サラリーマンのワーキングパワーが浪費、破壊されていき、心と身体が破壊されるだけでなく ・・・
@サラリーマンの技術や経験がうけつがれず、企業や行政当局の生産性が低下し、
Aメンタルヘルスの悪化による巨大事故のリスクが高まり、
B労災認定裁判や医療費高騰により企業の利益率が低下し、スキャンダルとなって社会的信用を失墜させ、
Cサラリーマンの頽廃(酒や性による歪んだストレス解消)が進行して、薬物依存者やストーカーなどによる犯罪と社会不安が増えて、 
D家庭の荒廃により次世代のサラリーマンは病的な状況になり・・・10年後の職場を知りたければ、今の中学、高校生を見ればよい・・・、

 以上の否定的現象が複雑にからみあって市場経済の危機、混乱をもたらすだろう。今はその過程が急速に進んでいる時期だ。
 つまり市場経済社会のまともな維持・発展について、まじめに考えるならば、メンタルヘルスを中心としたサラリーマンの健康増進は雇用者、被雇用者という立場の違いにかかわらず一致せざるをえないテーマである。
 そこには複雑で難しい課題がある半面、さまざまな立場の人的ネットワークが組織される可能性があり、労働運動を質、量ともに抜本的に前進させる可能性が生まれるといえよう。  この可能性を現実のするためには、メンタルヘルス問題に対する学習、研究が重要になってくる。

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