組織的なメンタルヘルス対策とは?


                 2002年6月24日

 

「管理人はいろいろ職場のメンタルヘルスを分析しているようだけれど、管理者(経営者)や労働組合は何からとりくめばいいのだ?」

 

率直にいって、管理人はこの点では明確なことは述べてきませんでした。

 

「職場のメンタルヘルスがとことんわかる本」には書いたつもりですが、この本はたかだか5000部しか売れていないし、HPだけをご覧になっている方も多いでしょう。このHPの特徴は、<個人の気の持ちようを変える方法や、癒しのしかたを教えること>ではありません。もちろん管理人に余裕があれば、そういうページも作りたいし、いくらかは必要でしょう。けれども管理人の専門はメンタルヘルス一般ではなくて、「職場のメンタルヘルス」なのです。

 

今の日本の職場のメンタルヘルスは、もはや個人の問題を通りこしています。各自の心構えや気の持ち方という牧歌的なアプローチではとうてい変わらない状況に陥っています。それは管理人が言っていることではなくて、プロフェッショナルな産業医学の権威が述べていることなのです。

 

「それは解ったよ! だけどウチはメンタルヘルスでは大変な状態なんだ! だから何からやればいいのか教えて!」という管理職や労組の皆さんには、以下の二つをお勧めします。

 

@    社員教育;講演やセミナーなどやったり、パンフレット(このHPそのものがパンフレットですが)を配ったりすること。多くの職場でなされていることです。また、これをしなければどうにもなりません。

でも、これをやったからといって、多くの職場にはメンタルヘルスの専門家がいるわけではないから、思うように進まないのです。

次の大事なステップが必要で、それは職場の健康診断です。

 

A    JMI健康調査を受けること

このHPは企業担当者だけではなく、労働組合の方々もご覧になっているでしょうから、誤解のないように思っていただきたいのですが・・・

社会経済生産性本部メンタル・ヘルス研究所のJMI健康調査をお受けになるのが一番でしょう。

     プライバシーは完璧です。500項目ほどのアンケートのようなものですが、職場には送らず、直接 同研究所に郵送します

     マークシート方式なので、研究員も個々の社員のデータを見ることなく処理されます

     個々の社員(自治体なら職員)のデータは会社(当局)には提供されません

     会社(当局)に提供されるのは、組織の診断結果です(これが最大のメリット)

     個々の社員(職員)には自宅に診断結果が郵送され1年間は各地で無料のカウンセリング相談が受けられます

管理人は労組の方にも、自信を持って、この「心の健康診断」をお薦めしますが、ただ一つ問題があって、それは一人あたり2500円ほどお金がかかる*ことです。厚生労働省の職業性ストレス簡易評価表を使えばタダ。

しかしこの職業性ストレス簡易評価表は組織のメンタルヘルス診断としては余り効果がありません。お金をかけずにできる範囲で、個人が簡単にセルフチェックできるというのが最大のメリットです。しかし、そのメリット・・・個人対象ということが逆に職場という組織の分析と、それに基づく対策面で不足しているのです。
そういう項目としては、せいぜい「仕事上で上司や同僚の支援が受けられるか?」という設問がある程度です。もちろん専属の産業精神衛生のドクターがいるような東証一部上場で、世界的なメーカーなら別ですが。そういう恵まれた職場なら、専門のドクターが職業性ストレス簡易評価表を分析してくれるから。

 

*もうだいぶ昔から、わが日本でも「水と安全はタダでは手に入らない」のです。それは国際的にも当然のことではないでしょうか?

 

A)以下は企業担当者の方に

 

経営管理や当局の方が、一人2500円ほどかかることで反対されるお気持ちはよく解ります。
「この大競争時代、1円でも節約すべきだ!」そう、まともなビジネスパースンなら、そう考えるのが当たり前の理屈です。
けれども職場のメンタルヘルスが悪化しているという現実から出発することが大事ではないでしょうか?


確かにお金はかかりますが、その2.4倍は必ず戻ってきます。


     健康保険組合の節約になる

     休業による傷病手当給付金の節約になる

     休業による生産性の低下が減る

     病気がこじれないで、有能な従業員の退職が減り、技術と経験が保たれること。

 

職場の安全と健康に対する投資は2.7倍の投資効果(米国および中央労働災害防止協会のデータ)があります。もちろん売り上げに対する直接効果はありません。利益を高めるのです。経済学的な用語で言えば間接賃金を節約するのです。この大競争の時代は、売り上げを増やすのが企業の目的ではなく、利益を高めることが直接目的のはずですね。つまり従業員の健康に投資することは、利益を高めて、会社も従業員もハッピーとなるのです。


 

B)以下は労働組合の役員の方に

 

生産性本部という字面に抵抗のある方もおいででしょう。けれども社会経済生産性本部メンタル・ヘルス研究所はビジネスパースンの苦労を知っている組織だと、管理人は思います。管理人は「職場のメンタルヘルスがとことんわかる本」を書く前に、社会経済生産性本部メンタル・ヘルス研究所の小田晋所長にインタビューしました。

小田晋所長は、「産業が雇用をつくり日本社会が存在するのだから、そこに働く勤労者の健康がもっとも大事」とおっしゃりました。ビジネスパースンのプライバシーが保たれて、その職場の課題について、現実をふまえた妥当な助言をしてくれるでしょう。

もちろん、労働組合にとって完璧ではありません。けれど、今はより良い方法を選ぶというのが、労働組合の社会的責任ではないでしょうか?

 
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