生産性とメンタルヘルス(上) マネージメントについて |
2002年10月30日更新
町医者の問題提起「中抜きしても、管理職をスタッフの仕事で埋没させてはいけない!」
みなさん、一緒に考えて見ましょう!
ビジネスパースンの目線に立ってマネージメントについて述べましょう。
所詮、医者なので変なところがあるかもしれませんが・・・ただ誓っていいますがビジネス書なんて読んでませんよ!
(1)技術の進歩
ITの進歩で、さまざまな業務にかんして、技術や経験はそれほど必要ではなくなりました。一定の型にはまった仕事はPCがやってくれます。30年までは、商用文を作ろうとすれば、手紙の目的、時節の挨拶、文章の型、相手先の業種にあったまとめ方などを覚えなければならなかった。短大卒の女性社員は、一生懸命になって、こういう文章のパターンを覚えてボールペンや万年筆で便箋に書いたものです。それは半年もすれば覚えられたものかもしれません。
でも今では、学生のアルバイトさんでも、ワードのテンプレートが使えれば商用文なんて1分で書けてしまう。
なぜでしょうか? それは、人間が商用文を書く手順や単語が、PCのソフトに置き換えられたのです。料理だってそうですね。管理人はフードプロセッサーを昔使っていましたが、玉ねぎの薄切り(水にさらしてレモン汁をかけて食べる)なんて、あっという間。シェフの包丁さばきが、モーターの回転と丸い刃によって、そのまんま真似られてしまう。
まだありますね。電話営業のマニュアルなんかもそうです。昔の優秀な営業マンのセールストークを書き記したものです。
そういうことは、ずっと昔にもあった。矢のようにとがった硬い木の枝をゴリゴリと板の上で、回し続けて火を起こしていた時代が長く続いて、火打石が登場した。昔の人はどんなに感激したことか!! きっとケータイを手に入れた中学生のような気持ち、NO! NO! それ以上だったはず。
別に技術の進歩というのは、PCやマシーンがなくても、経験を分かりやすく紙に書いて説明するだけでも良いのです。
そして
天才女性シェフ鴨沢瀬理の手と技が、フードプロセッサーになること。
シュワルツネッガーのパワフルな回転力が、パワーレンチになること。
渡り鳥の方向感覚が、誰にも数万円のナビゲーター(GPS)でまねられること。
とPCで心の状態をチェックしたり、モニタカメラをPCにつないで遠い町から遠隔操作で家の中をモニタさせたり出来るようになり、PCの中に可愛いアニメのアイドルがあたかも人格を持つかのように、ゲームの中で会話が出来るようになると・・・・。
何かもっと高級なことも中層神経=脳であるPCにやらせてみたくなる。
(2)ITによる中抜き
それはなんといってもビジネスさ!
部長「ウン、そんな難しいことじゃなくて、メールで随時報告させればいいじゃないの? そうすりゃあ、課長は要らないよな。A係長にまとめさせればいい! 自分が役員にまで出世するには、もっと業績を上げて(人件費を削減し)なければ・・・。」というわけで、部長は課長を子会社に出向させて、「A係長にスタッフからのメールをチェックさせてきちんと成果になっているのを、俺に転送させればいい。」と考える。
ていうのが言わば中間管理職の中抜きというのでしょうか?
(3)確かに組織はフラット化して会社の利益は増えた・・・か・な?
「しかし、妙だな。最近、A係長からの報告のメール、何か生彩がないというか、よく意味がつかめないよな。おや、うわさをすれば何とやら、彼からの新着メール。何! なんだって!! 馬鹿野郎、それじゃあ完全な赤字受注じゃないか!!! しかも、約束した納期に3日も遅いぞ!」部長は真っ青です。
そのころA係長はB社のPHSカードがささったC社のミニノートPCをもって、走り回っていました。なぜならスタッフの数も減っていたから。1kgもしないPCを持っているとはいえ、営業は最終的にFtoFつまり顔をあわせなければ、受注はできないのです。
最近、e-commerceだとかSCM(Supply chane management)*などという頭文字風のIT化が進んだように見えます。けれど価格競争が激しくて極限まで達しているから、各社の提示する価格が似たり寄ったりになって、あたかも地方の公共事業で談合したかのような、発注額や受注額になるのです。それに結構、シェアを維持することも大事だから、仕方なく赤字受注もしちゃうことだってある。ラインでは利益が出ない!
だからリストラしなければ、利益なんて出るわけない! その上さらに納期の競争になるのだけれど、ダントツに速い会社があったとしても、そのうち後発企業も無理してでも追いつこうとするから、次第にどんぐりの背比べになっていくわけです。競合他社の営業マンもモバイル営業しているから差が出ない。
*調達・生産・販売・物流といった業務の流れを、ひとつの「供給の鎖」としてとらえ、管理するという「サプライチェーン・マネジメント(SCM)」が注目を集めています。SCMの目標は不確実性の高い市場の変化に俊敏に対応し、「販売機会損失」「不良在庫」の課題を解決、キャッシュフロー効率を高めること(NRI 藤野著 日経文庫−
サプライチェーン入門−より)。
某IT企業が「コンピューターをもっと働き者に」というようなコピーをだしていたけれど、管理人は助詞の使い方が違っていると思う。
現代のビジネスパースンは「コンピューターでもっと働き者に」ならなければならないのです。
価格破壊と短納期化がかなり進んで、しかもほとんどの営業マンがノートパソコンやPDAを持っているわけです。見積もりはWEBやメールで行うということになれば、いったい何処に差別化が必要になるのかといえば、結局は生々しい人間関係になるわけです。Intranetsのサーバー上の付き合いでは満足できず、オフラインで直接会いたくなるというのが、群れを作って生きる人間という動物の、遺伝子レベルに組み込まれた本能だから。
上場企業の友人(ベテラン営業マン)は、医療関係ではたらくお嬢さんからの耳学問のおかげで医療と福祉の知識がある。そのおかげでユーザー(取引先企業の担当者)の個人的な悩み、たとえば痴呆になった父親の介護をどうするのか、という課題に応えてあげることで結構受注しているといいます。
モバイル営業といっても、商品を売り買いするという危険な作業は、機械ばかりに任せるわけには行かない。営業は今も昔も同じ。
けれどここで昔とは違う営業の課題をあげてみますと・・・
@まずは短納期だし、
A開発期間の短縮のためのサポートやメンテまで考えなければならない。
営業が、無茶苦茶技術や製造の尻をたたいて、納期に間に合わせたのだけど、それだけに未完成の部分やバグがないかと心配なのですね。それではA係長のその後をみましょう。
(4)結局は悲惨! A係長
実際、A係長のセクションでは、ユーザー企業からクレームがついてしまった。
「もし初期不良だったらどうしよう! 代替するの未だ無いよ!」 とスタッフたちは悲鳴を上げている。A係長は、彼らの悲鳴を聞きつけて、自分も必死で営業部隊のフォローをする。
彼は心の中でつぶやく。
「人数は確かにいる。でも新人で技術的なことは解らない奴だっているし・・・」
そして大声になる
「くそっ! こんな所でフリーズして、何で再起動しないんだ!! C社のPCは安定しているはずだ。落ち行け、しっかりしろ。 しょうがない会社に戻ろう。」
彼はウィルスを恐れて、メールや受発注に関するエクセルのファイルは、PCカードに入れた128MBのコンパクトフラッシュにコピーして、会社の自分のPCにオフラインでペーストしていたのですが・・・。
なんと、そのコンパクトフラッシュカードはエラーを起こしていたので、彼の知識では、貴重なデータを取り出せませんでした。
注)これと同じ事を、管理人は02年10月18日に起こして、大事な原稿入りの256のCFを結局はフォーマットしてしまったのです。
(5)本当に生産性はあがったの?
モバイル営業で短納期、ジャストインタイムになっても、製品そのものがナニだったら、最悪、損害賠償。車でいえばリコールですね。その上、組織のフラット化をしたというのに営業部隊を指揮・点検するはずのA係長は、会社のPCに向かって徹夜でファイルの復活という徒労に賭けているのでした。窓の外が白みかかっても、エラーメッセージしか出ない。A係長は、髪をかきむしって赤い目をしてコンパクトフラッシュを壁にぶつけたのです。
これで三種の神器ならぬ
三種の災厄=メンタルヘルスの悪化+ミス ⇒ 回収費用、メンテ費用、スキャンダル(損害賠償?)
(5)いったい何が問題だったの?
そう、ビジネスでは
@人件費を節約しなければならない・・・病院だってそうです。
A安く、納期は早く・・・昔からそうですよね。
そういうのは不可欠なのだけれども・・・
少なくとも、基本的には管理職にスタッフの仕事をさせてはイケナイ!
「ダメ絶対! 覚せい剤」というわけではないけれども。
人間の能力=ワーキングパワ−には限りがあるのです。
スタッフを減らし、管理職まで減らしていく。その心たるや天晴れといえますが・・・・
管理職がスタッフの仕事に埋没したら、スタッフというビジネス兵士を、いったい誰が指揮・点検するのですか?
その上、スタッフという兵士の頭数まで不足している恐怖!