郵政     医師から見た職員のストレス

 事業庁、公社化を意識した、人権を損ないかねない強制配転・異職種配転が日常茶飯事。 それは兄貴分(?)のNTTから学んだともいえますが、以下の特徴が見受けられます。

@ 配転
 人権無視の長距離、突然配転 単身赴任を余儀なくされる長距離の配転で、たとえば京都から東京など郵便局長自体の交代も頻繁になってきて、普通局では2〜3年、特定局では1年でかわる例もでてきています。また普通局と特定局の「人事交流」を名目に東京だけでも年間600名もの相 互の配転が強行されています。一般に5年以上同じ職場に属していると「人事交流」のリ ストにのってしまうほど。また「来年は人事異動だ」など、心の準備ができる配転ならまだ しも、急な配転は業種にかかわらず大きな精神的負荷になります。正式な文書もなく、内命の段階で突然上司から呼ばれ、4〜5人に取り囲まれ一ヶ月以内の配置換えを強制さ れるなどの事例が増えています。

A 心への負担を強いる異職種配転
 異職種配転*は全く異なる分野の仕事につくのにもかかわらず、官民を問わず新しい仕 事になれるための研修などは不十分で、職員個人の自己犠牲的な努力が強いられま す。しかもようやく仕事を覚えたかどうかの時から、ノルマは人並みを要求されるため、異 職種配転は特別に心への負担が大きいといえます。たとえば、貯金専門の職員が国 際郵便局にまわされたりしています。

*異職種配転のストレスについては「職場のメンタルヘルスがとことんわかる本」OOOページ参照

B 人員削減
 最近経験した特徴的な事例は、50歳台の特定局員でうつ病の患者さん。特定局 はいわゆる町の小さな郵便局で定員は6から7名。一名減でうつ病を発症し、職員 数が元に戻ったら内服薬も不要なほど回復し、また一名減で発病という方がいまし た。
 うつ病の経過が従業員数に直結していたケースで、郵政に特徴的というわけで はありませんが、職員の心の健康を考える上で典型例といえます。ちなみにメン タルヘルスと従業員数の関係を科学的に明らかにした資料は、社会経済生産性本部のメンタ ルヘルス研究所による次のような報告です。

従業員数の減少は、上司と関係・同僚との関係が悪くなり、帰属意識が低くなり、仕事 の負担感が増え、仕事の正確度が低くなり、将来への希望がなくなることと相関があった。 さらに無気力な傾向(破瓜病的)が増え、被害者意識(妄想症的)が多くなり、イライラとし て怒りっぽく(爆発)なり、体の調子(心気的)も良くないと感じ、不安はつのり、仕事の手 を抜くこと(社会的無責任)が多くなった。従業員数は職場適応と精神の全般的な安定に 相関している。

C 異常な営業ノルマとメンタルハラスメント
 たとえば「ふるさと小包」は郵便局の主力商品で大きな収益源です。
 この売上ノルマ が大きすぎるだけでなく、「4つ販売できないものはやめてもらいたい!」
そして窓をゆびさ し「できない者は、そこから飛び降りてもいい。」というような、恫喝的な管理がなされてい ます。これは前述した銀行と比べると、洗練された職場管理が確立されてい ないことを意味し、人権侵害も疑わせる労務管理によってでも民間企業と競争しよ うという当局の決意の表れ。
 
管理者の脅迫的、恫喝的な言葉、あるいは 直接的な言動ばかりでなく、見せしめや無視(村八分)などは、どのような立場の人にとってもつらいものです。ましてや長期間にわたって当局に忠誠を誓い、まじめに働 いてきた職員にとっては心が傷害され、発病の引き金にもなる犯罪行為です。

 ある職場で は発作的にホームで局長の名を叫びながら列車に飛び込み自殺する例もでてたそうです。これらの「心への暴力」が直接に自殺をまねいた場合はもとより、うつ病やノイローゼ を誘発させそれが慢性化した場合は、当然労働災害といえましょう。

 * 最近、監禁やマインドコントロールによってPTSDを発症した場合、傷害罪が求刑 される判例がでています。 筆者は「心への暴力」にもっと注意が喚起されるよう、「メンタル・ハラスメント」と名づけ、 これを規制していくことを職場の人権をまもる運動の一つとしてぜひ読者の皆さんに提唱 したいと思います。たたかいによって食い止めることをしない場合、職員のメンタルヘ ルスの悪化は加速度的に進み、やがては民営化の兄貴分であるNTTのように自殺 が増え、うつ病・ノイローゼなどの精神病が拡がり、さらにはほとんどの職員が 多かれ少なかれ、表現しがたい心身の不調に苦しむようになってしまいます。

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