フラクタルな山道 
 1996・11・17 函館山にて  


宮ノ森コースを歩こうとしたら
洞爺丸の殉難碑があった

この二ヶ月で5回も通りかかったはずなのに
気づかなかったとは

11月の曇天にそびえ立つ碑は
何近寄ってはいけない風情で

倒れかかった桜の樹も
行く手を塞いでいるようで

あっさり旧道に戻った
すぐにフラクタルな山道となった

濡れ落ち葉に散りばめられ山道は
盛夏と違って豊饒

くすんでめだたない落ち葉が
柔らかく行く手を覆い
身体じゅうが暖かくなる

紅葉、落ち葉は第一の否定
わが身は朽ち果てても
大地を豊穣にする


遥かな恒星の核融合反応が
光と熱と太陽風のエネルギーをもたらす

緑の樹木はエネルギー達を確実にとらえ
糖、アミノ酸、脂肪
そして遂には種や実をつくり

こんな風に
己の質を保存する
そして枯れ葉は量を保存する


春になれば 様々なゲノムたちは
己の第二の否定を決行する

種や実はもはや無く
小さな苗木となっているのだ!




フラクタル