2002年1月6日
子どものメンタルヘルス U
孤食という家族崩壊と子どもの病理
         


1)孤食について 
子どもだけで食事をとることが問題になっています。
これは家族崩壊のあらわれです。


2)親の長時間勤務
こういった家庭では家族の多くが、パートやアルバイトを含めた仕事についています。
とりわけ父親の勤務が長時間勤務であることが多いといえます。


経済学には、長時間労働は低収入をまねき、低収入は長時間労働をまねく、
という原則があります。

女性や若者の社会進出といえば聞こえがいいけれども、
この十年間で家庭の貧富の差が大きくなり、
ビジネスマンの身分社会化*が起こっています。
*「職場のメンタルヘルスがとことんわかる本」93ページ

夫の低収入は 主婦のパート化や高校生、大学生のアルバイト就業もたらします。

問題はオトナの長時間勤務なのです。
さらに男性サラリーマンの25%は交代勤務で24時間社会に生きています。
NHKの調査によれば最近の20年間で日本人の平均睡眠時間は
21分も短縮したそうです。

これでは家族の日々の生活はバラバラにならざるを得ません。
家庭が「共同下宿」になってしまい孤食がおこっているのです!


3)孤食の社会的な意味・・ワーキングパワ−の消耗
孤食は家族のこころがけの問題ではなく、個人ではどうにもならない社会的な問題です。
大競争時代に長時間勤務を余儀なくされ、
家庭のはたらきが傷ついたあらわれと考えられます。  


4)おなじみワーキングパワ−の消耗
「職場のメンタルヘルスがとことんわかる本」を読んでね!

誰でも働く能力は日々充電されて、今日も昨日と同じ体力と気力に
回復していなければなりません。

サラリーマンで長時間勤務のため、休日は子どもとも遊べず、ごろ寝に終る方もいます。
これは平日だけでは体力と気力の充電はムリということを示しています。

このような方は実質的には「過労死、在職死、退職直後死」の予備軍*です。
*具体的には月50時間以上の残業をされている方


5)家族という集団のワーキングパワ−の消耗
社会が例えば30年後も維持されるためには、
社会の最小の単位である家庭が
同じように維持されることが必要。
夫婦一組が二人未満の子どもしかつくらないとなれば人口は維持されません。

しかし機械化やコンピュータ化で就業可能年齢が高くなり、
歳をとっても働ける時代なので、
人口*はあまり問題にならないでしょう。

*ただし夫婦ともにワーキングパワ−が消耗しすぎて、
夫婦生活をいとなむ気がおこらなくなれば
子どもはできませんので日本の人口は減りすぎちゃう!

問題は家族の質です。

この10年ほどで社会の単位である家族の崩壊がかなり進んでしまったこと。
孤食は家族崩壊の一現象なのです。家族の保護機能が失われることで、
それぞれの成員、夫婦、子どもたちが精神的に不安定になり、モラルが低下するのです。

妻のキッチンドリンカー(台所飲酒)、子どもの飲酒、喫煙。


6)孤食家庭のいきつく先 

@家庭が仕事依存のビジネスマンを育てる?
子どもの世界が受動的で「ゆとり」のない背景には経済の大競争があります。
家庭と学校から《はやくしろ》といわれ 、考えるよりも《覚えろ》 と
言われ続ければ
子どもたちは企業戦士に育つのです。

朝練や夜おそくまで塾や習いごとにかよう姿は、まさに父親のコピーといえます。
小さいころから長時間勤務の練習をしているようなもの。
こんな子どもの平均寿命はいまのお年寄りに比べたら5年は短いでしょう。


A家庭の保護機能の弱まり
父親は長時間勤務や単身赴任で疲れはて、
子どもと接する時間がすくないのです。
そして女性も1999年に深夜労働が解禁されたために、母親も・・・

とりわけ父子のふれあう時間がすごく少ないので、
すれちがいを生みます。なぜなら

(A)妻子のことを考える以前に自分の心身管理で精いっぱい
(B)母親も含めてともかく家族みんながいそがしい

子は親の背を見て育つので、親が歳をとってもかえりみないことになります。



それでは事例を紹介しましょう。

中三 女子;だるさと胃の痛みによる食欲不振
長時間の塾通いがストレスでした。
英会話もふくめて、週4日の塾。夜の10時近くに母親が車でむかえにきます。

母親はそれが当たり前と思い(平均の変化)、
本人も当然の義務と思っています。
ただ、夜遅すぎるすぎることだけは問題とわかったようですが
*胃カメラ検査時に父親の付き添いなし

塾の数を減らすこと母娘とも納得できずに

結局薬を飲み続けなければ症状は取れませんでした。


B過労死の男女機会均等
ノストラダムスの予言の年、1999年に女性の深夜、
休日、時間外労働の規制が撤廃されました。

仕事と家事のニ重負担がいっそう大きくなります。
イギリスでは女子の夜間労働は1848年の工場法で禁止されたので、
日本は150年昔にもどりました。

Cおそるべき在職死社会
援助交際をのがれ、薬物乱用はきりぬけ、
競争社会に勝ちぬいて良い大学に入って、
就職できたと思ったら長時間過密勤務で在職死。

何とか死なずに62歳の定年まではたらけた人でも、年金がとても少ないから
結局、第二の人生も働きつづけたるとします。でもその途中で死んじゃったら・・・
お国のために第二の人生でも在職死
お国にとっては年金給付が節約できて大助かり。

D流動食社会
テレビのCMで室井 滋がOLに扮して、
朝駅でカロリーが摂取できるジェリー食を宣伝していました。

健康なはずの若いOLが流動食のお世話になるという情けないお話。
でも筆者はヴィーダー・イン・ジェリーが大好き!
熱の出る風邪をひいたときなど、食欲のないときには最高です!
そういうのがいやな人は、フルーツを食べましょう!


まとめ 子どもの世界の病理現象について

A)適応課題と発達課題の矛盾
あまりの優等生は本来の子どもとしての発達が歪んでいるのです。
交流分析でいえば無邪気な子どもの要素が少ないのです。
そういう子は脆弱な個性をもちやすく、突発的な非行を起こします。


B)子どもの世界自体が崩壊して同年齢で少数の付き合いしか
体験していないから自分を抑制する力が乏しくなっているのです。


C)不安への攻撃的対処・・・ナイフ問題
特に男子の場合
受験や進学に大人社会の反映が色濃くなっています。

夜遅くまでがんばってきたお父さんでも、リストラされちゃった!
ボクはどうすればいいの、ボクもそうなっちゃうの?

こういった不安解消の手だてがわからない時、人を攻撃したり
攻撃の準備(ナイフを持つなど)をするようになるのです。


D)拝金主義と援助交際
女子の場合
ただひたすらお金を手に入れたいための援助交際が
マスコミで年中報道されています。
要は退廃した大人の買春です。
こういう拝金主義はまさに現代日本の病理現象です。